過去の研究テーマ
微生物の代謝制御による膜ろ過プロセスの効率化
微生物が産生するバイオポリマーは,膜ファウリング(いわゆる目詰まり)を引き起こし,ろ過膜の透水性能を低下させます。膜分離活性汚泥法(MBR法)におけるバイオポリマー生成には,細菌による細胞間情報伝達機構(クオラムセンシング)が関係していると言われています。本研究では,MBRプロセスで膜ファウリングの原因となるバイオポリマー成分を特定し,クオラムセンシングや微生物代謝の阻害剤を用いることでその成分の生成を抑制して膜ファウリングを軽減する方法を研究しています。
主な発表成果:
- Phuc-Nguon Hong, Norihisa Matsuura, Mana Noguchi, Ryoko Yamamoto-Ikemoto, Ryo Honda* (2022) Change of extracellular polymeric substances and microbial community in biofouling mitigation by continuous vanillin dose in membrane bioreactor. J. Water Process Eng. 47, 102644. DOI: 10.1016/j.jwpe.2022.102644
- Phuc-Nguon Hong, Mana Noguchi, Norihisa Matsuura, Ryo Honda* (2019) Mechanism of biofouling enhancement in a membrane bioreactor under constant trans-membrane pressure operation. J. Membr. Sci. 592, 117391. DOI: 10.1016/j.memsci.2019.117391
- Smarch Panchavinin, Tomohiro Tobino, Hiroe Hara-Yamamura, Norihisa Matsuura, Ryo Honda* (2019) Candidates of quorum sensing bacteria in activated sludge associated with N-acyl homoserine lactones. Chemosphere 236, 124292. DOI: 10.1016/j.chemosphere.2019.07.023
- Ryo Honda*, Phuon-Thanh Phan, Tomohiro Tobino, Sirilak Prasertkulsak, Smarch Panchavinin, Phuc-Nguon Hong, Chanreaksmey Taing, Mana Noguchi, Wilai Chiemchaisri, Chart Chiemchaisri (2019) Diversity of N-acyl homoserine lactones in activated sludge detected by Fourier transform mass spectrometry. npj Clean Water 2, 11. DOI: 10.1038/s41545-019-0035-0
微細藻類を利用した廃水・廃棄物の再資源化プロセス
微細藻類による廃電子部品からのレアアース回収
希少希土類元素(レアアース)であるNd,Dy,Eu,Yなどは,磁性材,LEDなどの電子部品材料として不可欠な資源であり,液晶テレビ,携帯電話,自動車などの世界的な需要拡大に伴って消費量が増加しています。日本ではそのほとんどを輸入で賄っており,リサイクルや備蓄などによるレアアース資源の確保が求められています。微細藻類などの微生物の中にはレアアースを選択的に吸着するものがあります。本研究室では,これらの微生物を用いてレアアース回収を行うための最適な条件とその吸着機構を明らかにしました。
主な発表成果:
- 古橋 康弘, 原 宏江, 長谷川 浩, 本多 了* (2020) 微細藻類によるバイオソープションを用いた蛍光体溶出液における金属吸着挙動の評価. 土木学会論文集G(環境)57, III_319-326.
- Yasuhiro Furuhashi, Ryo Honda*, Hiroe Hara-Yamamura, Shoko Kobayashi, Koichi Higashimine, Hiroshi Hasegawa (2019) Optimum conditions of pH, temperature and preculture for biosorption of europium by microalgae Acutodesmus acuminatus. Biochem. Eng. J. 143, 58-64. DOI: 10.1016/j.bej.2018.12.007
メンブレンフォトバイオリアクターによる藻類バイオマス生産プロセス
下水処理水の栄養塩を利用して微細藻類を培養することで,地球温暖化の原因となる二酸化炭素を回収してバイオマス資源にするプロセスの開発を行いました。下水処理水中の窒素・リンは環境中では富栄養化の原因となりますが,藻類培養基質としては低濃度です。そのため,培養槽に浸漬膜ろ過を導入することで固液分離機能を付加した「メンブレンフォトバイオリアクター」を用いて,低濃度の栄養塩基質下でも藻類を高濃度に保持しながら高速度の連続培養が可能であることを明らかにしました。
二酸化炭素から生産された藻類バイオマスは,メタン発酵などのプロセスによってバイオガスなどのエネルギーとして回収することや,現在は石油を原料として生産されている炭素繊維やプラスチックなど代替原料とすることを想定しています。
主な発表成果:
- Ryo Honda*, Yuta Teraoka, Mana Noguchi, Sen Yang (2017) Optimization of hydraulic retention time and biomass concentration in microalgae biomass production from treated sewage with a membrane photobioreactor. J. Water Environ. Technol. 15(1), 1-11. DOI: 10.2965/jwet.15-085
- Mana Noguchi, Chizuru Hashimoto, Ryo Honda*, Yuta Teraoka, Seng Yang, Kazuaki Ninomiya, Kenji Takahashi (2017) Utilization of anaerobic digestion supernatant as a nutrient source in microalgae biomass production with a membrane photobioreactor. J. Water Environ. Technol. 15(6), 199-206. DOI: 10.2965/jwet.17-006
- Ryo Honda*, Jarungwit Boonnorat, Chart Chiemchaisri, Wilai Chiemchaisri, Kazuo Yamamoto (2012) Carbon dioxide capture and nutrients removal utilizing treated sewage by concentrated microalgae cultivation in a membrane photobioreactor. Biores. Technol. 125, 59-64. DOI: 10.1016/j.biortech.2012.08.138
正浸透(FO)膜を用いた省エネルギー型下水処理水・藻類バイオマス濃縮
正浸透(FO)膜プロセスは,浸透圧を利用して省エネルギーで溶液を濃縮することが可能となります。 メンブレンフォトバイオリアクターへの窒素・リン供給の効率化を目指した下水処理水中の栄養塩濃縮および藻類バイオマスの省エネルギー濃縮を目指した研究を行いました。 処理水のpHにより栄養塩の阻止率が変化することや,微細藻類培養液の濃縮に適した膜面配置などを明らかにしました。 本テーマは,カリフォルニア大学ロサンゼルス校との共同研究として行っていました。
主な発表成果:
- Ryo Honda*, Weerapong Rukapan, Hitomi Komura, Yuta Teraoka, Mana Noguchi, Eric M.V. Hoek (2015) Effects of membrane orientation on fouling characteristics of forward osmosis membrane in concentration of microalgae culture. Biores. Technol. 197, 429-433. DOI: 10.1016/j.biortech.2015.08.096
下水処理水からのバイオリファイナリー原料物質の生産
下水処理水の栄養塩を利用して微細藻類を培養することで,地球温暖化の原因となる二酸化炭素を回収してバイオマス資源にすることが可能です。微細藻類の中には固定した二酸化炭素をデンプンなどの多糖類として細胞内に蓄積するものがあります。この細胞内デンプンを出発点として,樹脂やプラスチックなど化成品の原料を作ることができます。本研究室では,微細藻類のデンプン生産量を最大化するような条件の探索や,藻類バイオマスをエポキシ樹脂の原料であるHMFへと変換する方法を研究しています。
主な発表成果:
- Mana Noguchi, Ryo Aizawa, Daisuke Nakazawa, Yoshiki Hakumura, Yasuhiro Furuhashi, Sen Yang, Kazuaki Ninomiya, Kenji Takahashi, Ryo Honda* (2021) Application of real treated wastewater to starch production by microalgae: potential effect of nutrients and microbial contamination. Biochem. Eng. J. 169, 107973. DOI: 10.1016/j.bej.2021.107973
- April Htet, Mana Noguchi, Kazuaki Ninomiya*, Yota Tsuge, Kosuke Kuroda, Shinya Kajita, Eiji Masai, Yoshihiro Katayama, Kazuhiro Shikinaka, Yuichiro Otsuka, Masaya Nakamura, Ryo Honda, Kenji Takahashi (2018) Application of microalgae hydrolysate as a fermentation medium for microbial production of 2-pyrone 4,6-dicarboxylic acid. J. Biosci. Bioeng. 125(6), 717-722. DOI: 10.1016/j.jbiosc.2017.12.026
「嫌気性光合成プロセス」による高濃度有機廃水処理プロセス
紅色非硫黄細菌(PNSB: purple non-sulfur bacteria)は,光合成によってエネルギーを得ながら水中の有機物を資化して増殖するため,太陽光のエネルギーを利用して廃水中の有機物をバイオマス資源として再資源化することが可能となります。食品工場排水を対象として酸化池型の熱帯向けの有機性廃水処理・再資源化プロセスとして開発を行いました。混合培養下でPNSBの選択的増殖を行うための排水流出入時間など最適な運転制御条件や浸漬膜ろ過の導入によるプロセスの安定化の検討,スケールアップにおける光照射条件の最適化と微生物生態解析を中心とした研究を行いました。本研究は,タイ王国カセサート大学との共同研究として行いました。
主な発表成果:
- S. Chitapornpan, C. Chiemchaisri*, W. Chiemchaisri, R. Honda, K. Yamamoto (2013) Organic carbon recovery and photosynthetic bacteria population in an anaerobic membrane photo-bioreactor treating food processing wastewater. Biores. Technol. 141, 65-74. [Journal]
- S. Chitapornpan, C. Chiemchaisri*, W. Chiemchaisri, R. Honda, K. Yamamoto (2013) Organic carbon recovery and photosynthetic bacteria population in an anaerobic membrane photo-bioreactor treating food processing wastewater. Biores. Technol. 141, 65-74. [Journal]
- Ryo Honda*, Kensuke Fukushi, Kazuo Yamamoto (2006) Optimization of wastewater feeding for single-cell protein production in an anaerobic wastewater treatment process utilizing purple non-sulfur bacteria in mixed culture condition. J. Biotechnol. 125(4), 565-573. [Journal]
下水処理場における未利用資源を利用した地球温暖化ガス排出削減
下水道システムからの地球温暖化ガス排出量は日本全体の約0.5%(2004年度)を占めています。下水処理場の未利用資源を活用した地球温暖化ガス排出削減策として,処理場敷地への太陽光発電と小型風力発電の導入および下水汚泥堆肥を利用した燃料作物栽培を行った場合の地球温暖化ガス排出量の削減効果を検証しました。
主な発表成果:
- 本多 了*, 福士謙介 (2011) 下水汚泥を利用した燃料作物栽培による温室効果ガス排出削減効果. 土木学会論文集G(環境). 67(6) (環境システム研究論文集. 39), II_299-305. [Journal]
- 本多 了*, 福士謙介 (2011) 下水処理場の敷地を利用した太陽光発電・小型風力発電導入によるエネルギー創出ポテンシャル. 土木学会論文集G(環境). 67(2), 47-53. [Journal]
アジア大都市近郊における都市農村間の水資源・栄養塩循環
アジア大都市近郊では,都市の拡大に伴う開発によって都市農村混在型の土地利用が生じており,都市農村が近接することによる特徴的な資源循環がみられます。タイ王国バンコク市郊外では,卓越した運河網が現在も農業用排水路・交通路として利用されているが,新興住宅地の開発により未処理の生活排水の運河への流入が散見され,運河を介在した宅地・農地間の水資源・栄養塩の循環フローが形成されていると考えられます。また,低平地に位置するバンコクデルタ地域では,運河の富栄養化によるホテイアオイや藻類の異常繁殖がしばしば問題となっています。本研究では,バンコク市郊外のノンタブリ県を対象として宅地開発に伴う運河を介した栄養塩循環フローの変化を詳細な現地調査に基づいて定量化し,宅地開発の進行が運河の栄養塩負荷増加に大きく影響していることを明らかにするとともに,熱帯地域に特徴的な降雨パターンを考慮した郊外住宅地向け小規模分散型処理システムの在り方について提案を行いました。
また,廃棄物回収利用や宅地造成に伴う資源移動に伴う環境負荷を複数の宅地開発シナリオに基づいて地球温暖化ガス排出の観点から検証し,都市農村混在型低密度宅地開発シナリオの方が都市農村分離型高密度宅地開発シナリオよりも地球温暖化ガス排出量が小さいことを明らかにしました。本研究は,土地利用,廃棄物処理,人類生態,農業経済分野との分野横断型研究として実施しました。
主な発表成果:
- R. Honda*, Y. Hara, M. Sekiyama and A. Hiramatsu (2010) Impacts of housing development on nutrients flow along canals in a peri-urban area of Bangkok, Thailand. Water Sci. Technol. 61(4), 1073-1080. [Journal]
- Yuji Hara*, Ai Hiramatsu, Ryo Honda, Makiko Sekiyama, Hirotaka Matsuda (2010) Mixed land-use planning on the periphery of large Asian cities: the case of Nonthaburi Province, Thailand. Sustain. Sci. 5(2), 237-248. [Journal]
- Ai Hiramatsu*, Yuji Hara, Makiko Sekiyama, Ryo Honda (2009) Municipal solid waste flow and waste generation characteristics in an urban-rural fringe area in Thailand. Waste Management Res. 27(10), 951-960. [Journal]
水資源利用の持続可能性評価手法の開発
水が利用されるとき,その水量は必ずしも減るわけではありません。蒸発散や輸送によって利用量より排出量が減る用途と,水質は劣化するが量の変化(減少)を伴わない用途があります。利用される水の7~8割は後者のような媒体利用であり,質の回復さえ行えれば何度でも利用可能な資源です。技術的には廃水から飲用水準の水を作ることが可能である今日において,水不足とは,単に水資源量と取水量の量のバランスだけで引き起こされる「量的水不足」と,処理を含む水利用コストが合理的な範囲を超える「質的水不足」の2つの状態があるといえます。水利用コストの変化が地域の水資源利用量に与える変化を考究し,また,量だけでなく質(コスト)の観点も含めた水資源利用の持続可能性指標の概念構築を行いました。
主な発表成果:
- Ryo Honda, Hirotaka Matsuda (2010) Conceptual development of sustainability assessment for water resources. WateR-InTro Workshop on Research and Development for Water Reuse Technology in Tropical Regions 2010, Phuket, Thailand, October 2010.
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